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翻訳ぶらり旅

『〇〇料理』のなぞ



舞台俳優 劇団ボンボン

・・・いったい、いつ頃からだろうか。いろんな国や地域の料理を、国内にいながらにして楽しめるようになったのは。

バブルの頃には確か「イタめし」が雑誌やテレビのグルメ特集でもてはやされていたし、やけに飲茶がはやったことも、タイ料理人気が高かった頃も、過去にあったはず。

が、しかし。しかし、である。気になってしかたがないことがある。『〇〇料理』という名のもとに人々が口にしている料理たちは、本当に『〇〇』の料理なのであろうか。



アメリカで、初めて海外の日本料理の店というものに入った。

カウンター・キッチンの中で、料理人が長いナイフとフォークのような器具を手に、かちゃかちゃと鳴らしながらジャグリングのようなパフォーマンスで、出来上がりを待っている客を楽しませる。そうして焼きあがった食材が、慣れた手つきで客に供される。日本料理のイメージは、どうしても湧かないのである。・・・だって鉄板焼きなんだから。

がしかし、味噌汁は出る。白いごはんも食べさせる。お箸で頂く。・・・んー、味噌汁と白飯が出れば日本料理屋ということなのか。



同じくアメリカで、別の店に入った。今度は、よりもっともらしい佇まいの「日本料理屋」である。ウェイトレスたちは、絣のような着物のような制服に、えんじ色の前掛けをしている。天ぷらがお品書きの主たる存在である。

ビールを飲みながら話をしているうちに、注文した「天ぷら盛り合わせ」が来る。顔ぶれを確かめる。海老。しいたけ。ピーマン。玉ねぎ。ギョウザ。・・・ギョウザ?ぎょうざ。漢字で書けば、餃子。旧仮名遣ひなら、ギヤフザあるいは、ぎやふざ。そしてその夜のホストは今や、黄金の微笑みでテーブル越しに「ささ、久しぶりの母国の味、たんと召し上がっとくれやっしゃ」と言ってくれている。



日本から遠く遠く離れた国でふらりと入ったごはん屋で、地元のじいさまが話しかけてきた。

じいさまは、ありったけの知識の中から、歴史やらなんやら、自分と少しでも共有できそうな話題を選んで話そうとしてくれている。それはわかる。痛いほどよくわかる。・・・がしかし。しかしだ、じいさま。ことごとく、それらは中国の話なのである。私は日本人。誤解を解かなければ。仕方ない。アレを使うか。

食べると外国語がとたんにできるようになる、かの有名な「ぐにゃぐにゃ」したヤツを翻訳コンニャクーとか叫びながら食す。そう、私は翻訳会社の社員。例のヤツさえあれば頭の中の翻訳モジュールがアクチベートするのさっ。

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